● 飛鳥を歩く 〜第二回 鬼の俎から亀石まで〜 04.9.11(SAT) 

今回も前回に引き続き、日本の原風景「飛鳥」の紹介です。

前回記した猿石は民家の裏手のようなところにあったので、
いったん引き返して周遊歩道に戻ります。
飛鳥の周遊歩道は、本当に最高の散歩道。
周りを畑に囲まれたゆったりとしたその道をしばらく行くと、
何やら少し不穏な空気のする空間に迷いこみます。
それが、「鬼の俎」エリア。名前からして…不気味です。

正直ぼくはこの石に関しては事前に名前も聞いたことがありませんでした。
見た感じもただの薄っぺらい石だし、単純な好奇心で足を踏み入れたのですが…
しかし、近くの案内版を見て、驚愕っ!何とこの石、
その昔人喰い鬼が捕らえた旅人をさばいた俎(まないた)だというんです!
おぉ、なんと恐ろしい伝説…。
静かに日陰を作る木々たちのざわめきが、まるで異世界へ誘っているようで、
熱と音を一瞬、奪っていきました。
また、この俎の向いにも、もう一つ別の石があるのですが、
そちらは「鬼の雪隠」、つまり鬼のトイレで、
俎でさばいて料理し食したあと、雪隠で用を足したんだとか…。
うーむ。こわい、こわい。
本当のところは、この2つの石、一組の古墳の石室だったらしいんですが、
どうしてこんな恐ろしい伝説が生まれたのか…。
その由来にむしろ、ぼくは、超自然的なものへの畏怖を感じたのでした。

そこから再び周遊歩道へ戻り、今度はしばらく歩きます。
途中、何度か自転車に乗った家族連れや子供達が、
爽やかに風をさらって、ぼくを追いこして行きました。
今回は歩くことに決めたぼくでしたが、自転車も本当に気持ちよさそう!
ただ、中には車で回っている観光客もいましたが…
あれはやっぱりちょっと悲しかったですね。
車でぱっぱと名所を回って、ゆっくりこの濃密な緑の空気を吸わないなんて、
なんてもったいないんだろうと思いました。

そうこうして少し難しいことを考えているうち、ひょっこり出会ったのが、
皆さんご存知のあの「亀石」でした。
飛鳥の石の中でもおそらく一番人気だろうこの亀石。
ぼくも飛鳥に来て最も会いたかった石です。
何と言ってもこの和み系の少し気の抜けた表情とフォルムが愛らしいっ。
実際の亀石は、思っていたよりこじんまりとしていて、
道の脇の草々の中に、ひっそりと落ち着いていました。
しかしこの亀石にも実は恐ろしい言い伝えがあって、
現在は南西を向いているこの石が、西を向いた時には、
大和一円が泥の海に沈むというのです。
鬼の俎の伝説も併せて考えてみると、
人々の信仰は自然への愛や近しさでありながら、
同時に常に畏怖・畏敬の念が込められていたんだと、
知った気がしました。

そして次はいよいよあの聖徳太子生誕の地、橘寺へ向かうのですが、
それはまた次回に。




鬼の俎。
写真では少しわかりにくいのですが、
表面がいくつか筋になって裂けていて、
鬼の怪力を思わせます。

 



周遊歩道脇の民家の庭、
おそらく、みかんの木、かな。
青々と空へ生命を伸ばしていました。

 



亀石。
愛らしい表情でありながら、
岩の原始的な質感が残っていて、
神秘的な陰も感じました。

 



畑のひまわり。
歩く元気をくれました。

 

奈良の散歩に役立つ本
るるぶ奈良を歩こう(’04)
奈良

 

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